石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」に掲載された、過去の記事よりQ&Aをご紹介!石田衣良の回答もご覧頂けます。

▼Q▼
私には結婚したい人がいます。学生の時からの知り合いで、地元も同じで私も彼も東京に暮らしています。つきあっていた期間もあるのですが、なかなか彼に結婚する気がなく、あきらめて他の人とつきあいました。だけど、その人ともうまくいかず別れました。そういう相談を彼にしても、嫉妬心みたいなものも感じられません。私は語学もできるし、会社からも期待されていて、経済的にも問題はありません。でも、年齢を考えると結婚して子供を生んで、実家の近くに住みたいと思っています。彼は地元が同じで、性格は優しくてまじめで、話も合うので結婚相手としては理想的なんです。でも、そういう話をしても結婚に全く興味がないような感じです。あきらめて、他の人を探すべきでしょうか?

【A】

これね、ちょっと前提がわからないんですよ。今ふたりがきちんとつきあっているかどうかがわからないんですよね。「つきあっていた期間もある」ということだけど、何かパッとしない。あなたの問題は、あれやこれやと条件をつけて、自分のライフプランにあわせて男を選びたいと思っていることです。「条件にあうから、なんとなく彼がいいかな」といっているんだけど、はっきりいってたいして好きじゃないよね? 別れたあともダラダラとつきあっているけど、性的な雰囲気が匂わないんですよね。彼のほうは「彼女とつきあってみたけど面白みのない子だな」「エッチが合わないな」とか思っている気がするんだよね。あなたが他の男とつきあうという話をしても嫉妬もしていないっていうじゃない。ということは女性としてはあまり見ていないということなので。 ライフプランに合うというだけで、保険のコースのように「みんなこれに入っているからこれくらいでいいんじゃない」と決めてしまうのは、自分自身のためにもやめたほうがいいんじゃない? 自分のライフプランを大事にするのももちろんいいけど、そういうのを打ち壊すくらい男の人に惚れてみるっていう経験が必要なんじゃないかな。 この彼はむずかしいと思うよ。よくいうけど「ロバを水飲み場に連れていくことはできるけど、水を飲ませることはできない」ということわざがあるんだよね。彼はずっと水飲み場にいるんだけど、あなたという水をひとくちも飲んでいないんですよ。これはもう飲ませられないと思う。いっしょにいてもときめきがないんだもん。たぶんあなたのほうから「ご飯にいこうよ」とかいって誘って会っているだけだと思うんですよ。彼のほうからは積極的に何もいってこないと思うので、はっきりいって一人芝居になっていますから。他を探すか、自分の条件を緩和するかですね。 でも、どうなんだろう。こうやって仕事も何もかもうまくいっている優秀な女の人って、男をトロフィーみたいにするよね。見てくれがよくて経済力があってコミュニケーション能力があって素敵、ようするにトロフィーとしての男をほしがっているだけなので、あなたにとってそれで大丈夫なのかというのはありますよね。『チャタレイ夫人の恋人』のように、結婚したあとで本当にガツンと性的に惹かれるタイプに出会って、根こそぎもっていかれるという可能性もあるから。「良識を持ったまま一生生きていける」と思っているかもしれないけど、恋愛と運命というのは一枚うわてなので、もう一回自分自身を見つめたほうがいいね。まあ、この彼はあきらめたほうがいいんじゃない?

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