石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」に掲載された記事よりQ&Aをご紹介!石田衣良の回答も全文ご覧頂けます。
▼Q.11▼
35歳女性です。私は父母妹の4人家族で育ちました。母は仕事を昔からしていてキャリアがあり、私の就職先や世間体をとても気にします。母の影響もあり薬剤師の試験に合格し、母のすすめた大手企業の就職先に合格し勤めていたものの、自分のやりたいことが他に見つかり反対を押し切って家も出てその仕事をしています。
ですが常に母親の評価が気になり、実家に帰ると従ってしまう自分が怖く、だけど遮断することもできず、どういう距離感でいたらいいか悩んでいます。
【A】
これは実はお母さんの問題じゃないんだよね。あなたが、人や世間を評価するときのお母さんの基準を無理矢理飲みこんでしまったのがつらいことなんですよ。そこから自由になれれば、その日から本当に自由になれるんですよね。あなたは優秀だし、自分の仕事も持っているし、今やりたい、新しい仕事も見つけている。だとしたら本当は母親のことなんてまったく気にならないはずなんです。小さいころからそういうお母さんの重力圏で育っちゃったつらさっていうのはあると思うけど、そろそろ親離れをするのが、人生の仕事としても大事なんじゃないかな。
たぶんこれ、お母さんの目を気にして男の人ともうまく付き合えてないと思うんだよね。だからそういう点でもぜひ親離れをしてみましょう。その場合の問題点は、親がどういう人間であるかじゃなくて、あなた自身がどういう人間で、これからどう生きたいかってことなんだよね。
そこをきちんと考えた上で、がんばってみてほしいな。お母さんの呪いの言葉って怖いんだよね。「お前の幸せを思って」「お前を愛しているから」と前置きした上で、さらに「だからこういう仕事をやれ」「だからこの学校に行け」「だからこういう人と結婚しろ」と続ける。二重に呪いがかかるんだよね。
やっぱり母親は強烈に強いので、愛情による支配みたいなのを無意識のうちにやってしまうんですよ。そこはすべての母親が意識的にならなきゃいけないところです。あなたは、もう独立して一人で暮らしているようなので、ちょっと本を読んでみませんか? まず「母源病」という言葉をネットで検索してみてください。心理学で、母親による支配について書いた本がたくさん出て来るはずです。母親に一生をダメにされた女の人がたくさん紹介されているので、自分がどういうケースに当てはまるのかを考えて、客観的に母親と自分のことを分析してみる。それだけでグッと気持ちが楽になるはずです。
その上で、どうしても生きづらいようならカウンセラーとか分析医に行ってみるっていう手もあると思います。でも、母親との問題を抱えていない子は逆に少ないよね。そういう意味では、母親から独立するというのは、すべての人にとって、一つの大事な仕事なんだと思います。
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