▼Q▼私は特技がありません。。。　─　恋と仕事と社会のQ&Aより

石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」に掲載された、過去の記事よりＱ＆Ａをご紹介！石田衣良の回答もご覧頂けます。

▼Q▼
私は特技がありません。今までプロフィールなどの特技の欄にどれだけ悩まされたことか……。何をしても標準的にできるし、いろいろなことに興味があって、すぐ始めるのですが、ある程度できるとその先を極めようとするまで思い至りません。まわりの人からはよく「何でもできるね」「器用だね」と言われるのですが、一番得意なことは何だろうと考えると思い当たりません。好きなことなら追求できるとよく言いますが、私は何が好きなんだろうと疑問をもってしまいます。私は探究心がない人間なのでしょうか。

【A】

なるほど。あなたには、特技がありますよ。手先が器用なところと、ある程度のところまでは、なんでもすぐに覚えられるところです。あなたは「だめだ、だめだ」といっていますけれど、ぼくもこのタイプなんです。ぼくもある程度のところまではパッと見た瞬間にできるようになるんですけど、そこから先にちゃんといけたのは本当にいくつかしかありません。なので、それでいいんじゃないですか。これは決してマイナスのことではなく、いろんなことを器用に真似ができたり覚えたりできるのはとても素晴らしいことです。それをいかして、これからは変なことを覚えてみたらいかがでしょうか？　あまり必要ないかもしれませんが、手旗やモールス信号を覚えるとかね。他には、手先のこまかな技術がいる変わった刺繍や、工作、テキスタイルなど、なんでもいいんだけど、そういう変なことをたくさんもっている人というのが、手品師みたいでぼくはおもしろいと思うんですよ。手品と同じで、みんなのまえで披露できるようなことを２つか３つ覚えたら、もう次のことにいっちゃう。何かのパーティがあると、変わった手品や、すごい折り紙をつくって見せて「こんなのできたんだよ」といって、ニコニコしている不思議でおもしろい人になってはいかがでしょうか。